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アルコール性肝炎

アルコール性肝炎

アルコール性肝炎とは、日常的に飲酒習慣のある方が多量の飲酒を行った際に発症する病気です。発症すると、腹部の右上付近に痛みが生じます。血液検査では、他の急性肝炎と類似した結果が出ますが、多量の飲酒をした後であれば、アルコール性肝炎と診断できます。

ただし、女性の場合は少量の飲酒でもアルコール性肝炎を発症する恐れがあるため、注意が必要です。また、一度発症したアルコール性肝炎は再発しやすく、その後肝硬変へと進展する恐れもあります。アルコール性肝炎と診断された方の中にはアルコール依存症であることも多いため、その場合にはアルコール依存症の治療も同時に行う必要があります。

アルコール性肝炎と非アルコール性脂肪性肝炎

非アルコール性脂肪性肝炎とは、肥満や過食、運動不足、糖尿病、脂質異常症などで脂肪肝になった際に発症する恐れのある病気です。
アルコール性肝炎と特徴が類似し、発症メカニズムも共通しているため、進行すると肝硬変や肝がんに進展する恐れもあります。

アルコール性肝炎の原因

上記の通り、アルコール性肝炎は飲酒習慣のある人が多量の飲酒を行った際に発症する病気です。アルコール性肝炎になると、肝細胞が腫れを起こして好中球浸潤が見られるようになり、中には肝細胞内にマロリー小体と呼ばれる変性物質が現れることもあります。この状態になると、肝硬変や肝臓がんに進展する可能性が高まります。

日本消化器病学会やアルコール医学生物学研究会の定義では、1日あたり純アルコールを60g接種する習慣を5年以上継続すると、アルコール性肝炎を発症するとされています。ただし、女性や、アルデヒド脱水素酵素の機能が低下している人の場合は、1日あたりの純アルコール摂取量が40gでも、アルコール性肝炎を発症する恐れがあると報告されています。

一方、男性で週210g未満(1日30g未満)、女性で週140g未満(1日20g未満)の飲酒量で肝炎を発症した場合には、非アルコール性肝炎と診断されます。なお、適度な飲酒量は1日平均20g程度とされています。

種類 アルコール度数 アルコール換算量
ビール(中瓶1本) 500ml 5% 20g
日本酒 1合 180ml 15% 22g
焼酎 1合 180ml 35% 50g
ワイン(1杯) 120ml 12% 12g
ウイスキー ダブル 60ml 43% 20g
ブランデー ダブル 60ml 43% 20g

アルコール性肝炎の進行

アルコール性肝炎は、アルコール性脂肪肝から進展して発症するケースが多く見られます。アルコール性脂肪肝は、肝臓に余分な脂肪が多く蓄積している状態の病気で、特に自覚症状はありません。この状態なら、節酒や禁酒を行い、運動習慣を取り入れるなど対処すれば、肝臓を正常な状態に改善することができます。

しかし、アルコール性脂肪肝を長期間放置して飲酒習慣を継続したり、重症化を起こすと、次の段階であるアルコール性肝炎や肝硬変に進展するリスクが高まります。

アルコール性肝炎は、アルコール性脂肪肝よりもさらに肝機能が低下している状態の病気です。発症すると、発熱や嘔吐、下痢、腹痛などの全身症状が現れます。また、重症化すると多臓器不全や意識障害を伴う劇症肝炎となる恐れがあります。劇症肝炎は緊急入院治療が必要となりますが、救命率が低い危険な病気です。

アルコール性肝炎がさらに進行すると、最終段階であるアルコール性肝硬変となります。アルコール性肝硬変になると肝細胞が収縮を起こし、肝機能が著しく低下します。肝機能が低下することで慢性的に栄養を摂取できなくなり、体重が減少していきます。その他にも、痛みや腹水、吐血などを伴ったり昏睡状態に陥ることもあります。

アルコール性肝炎の検査

当院では、アルコール性肝炎の疑いがある場合には、血液検査や飲酒習慣の確認などを行ってできるだけ早く異常を検知し、適切な対応を行うよう心がけています。その他にも、肝炎ウイルスの感染などで肝機能が障害されていないかなども、合わせて検査を行います。

アルコール性肝炎まで症状が進行すると治療は困難となりますので、気になる症状がある場合はできるだけ早く当院までご相談ください。

血液検査

血液検査では、主にASTやALTなどの肝酵素の数値に着目します。
これらは肝細胞の状態を表す指標で、アルコール性肝炎を発症するとこれらが基準値以上に高くなる特徴があります。
その他にも、アルコール性肝炎の場合はASTがALTより高くなることや、γ-GTPの数値が高くなるなどの特徴もあります。

超音波検査

血液検査では特に異常が見られなくても、アルコール性肝炎の前段階であるアルコール性脂肪肝を発症している可能性があります。
したがって、超音波検査によって肝臓の状態を確認することも大切です。
脂肪肝の場合、超音波検査で観察すると肝臓が白く光って見える特徴があります。

アルコール性肝炎の治療

アルコール性肝炎は薬剤による治療が行えません。肝臓には解毒作用があるため、薬剤を異物と判断して除去しようとはたらいてしまい、肝臓の負担が増加するためです。したがって、吐き気止めや痛み止めの薬も服用できません。

アルコール性肝炎の治療に最も効果的なものは、飲酒習慣の改善になります。
しかし、アルコール性肝炎を発症するほどの飲酒習慣がある人にとって、摂取や断酒は非常に困難です。

当院では、自分ではなかなか飲酒習慣を改善することができない患者様のために、様々なアプローチで治療を行っています。ぜひ一度ご相談ください。

休肝日を作りましょう

飲酒習慣の改善には、休肝日を作って肝機能を回復させることも大切です。アルコールの分解には5時間以上かかるため、毎日飲酒し続けていると肝臓も休む暇なくフル回転で活動し、負担が増大します。
理想は週3日以上の休肝日を作ることですが、いきなりこの習慣を取り入れることは困難な場合が多いため、まずは週1日休肝日を作ることから始め、徐々に休肝日を増やしていきましょう。