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血便

血便とは

血便(下血)とは、何らかの原因によって消化管が出血を起こし、血が便に混じって肛門から排出される状態の病気です。どの部分から出血を起こしているかによって、便の状態や色は異なります。

大腸など肛門から近い部位であればあるほど真っ赤な鮮血便となり、胃や十二指腸など肛門から距離がある部位からの出血であればあるほどはタール状の黒色便になる傾向があります。

便の色や状態の違い

血便は大きく分けて鮮血便と黒色便(タール便)の2種類に分類されることが多いですが、その中間の暗赤色便も含めて3種類で表現されることもあります。色以外では、粘性の血液が混入した粘血便という便もあります。

黒色便

血便は、一般的に肛門からの距離によって色が変化します。距離が遠いほど、黒っぽく粘性の高い便になる特徴があります。黒色便やタール便の場合は、主に上部消化管からの出血が原因とされます。これは、血液中の鉄分が胃酸によって酸化することによります。

したがって、黒色便の症状が見られる場合には、胃カメラ検査を行なって原因となる病気を特定していきます。ただし、肛門から比較的近い回腸末端や盲腸、上行結腸から出血を起こしても、体内に滞在する時間が長ければ血液が酸化されて黒色便になることもあります。その場合には、大腸カメラ検査を行うこともあります。

その他では、鉄欠乏性貧血を改善させるための鉄剤を服用している場合にも黒色便が出ることがあるため、該当する方は診察の際にお申し出ください。

鮮血便・暗赤色便

大腸や小腸など比較的肛門から近い部位から出血を起こしている場合には、鮮やかな赤色の鮮血便となります。これは、血液が体内に滞在する時間が短いほど、血液中の鉄分の酸化が起きないことが理由です。ただし、肛門からの距離がある食道や胃、小腸などからの出血の場合でも、出血量が多ければあまり酸化することなく鮮血便が出ることもあります。大腸憩室から出血を起こす憩室出血の場合でも、多量に出血を起こして鮮血便になることがあります。したがって、鮮血便の量が多い場合には注意が必要です。

一方、便器が真っ赤に染まるほどの鮮血便が出ると同時に肛門に痛みが生じている場合には、痔や肛門の病気が原因である可能性が高いとされます。特に、直腸からの出血の場合には様々な病気の可能性がありますので、痔だと自己判断せずに一度当院までご相談ください。

なお、近年では肛門がんも増加傾向にあります。診察の段階では痔や肛門の病気だと判断し、念の為に大腸カメラ検査を行なったら肛門がんのほか、直腸がん、潰瘍性大腸炎、直腸潰瘍、直腸ポリープが発見されたケースもあるため、注意が必要です。

粘血便

大腸の粘膜が炎症を起こしている場合には、粘性の血液に混入する粘血便になる傾向があります。大腸の粘膜が炎症を起こす病気としては、感染性腸炎や虚血性腸炎潰瘍性大腸炎クローン病などが挙げられます。

また、便の色が暗赤色の場合は、肛門から比較的距離のある部位からの出血の可能性が考えられますが、中には肛門からの距離が近くても体内での滞在時間経過が長い場合は暗赤色の便が出ることもあります。このように、暗赤色の便が出た場合には、下部消化管のあらゆる病気の可能性がありますが、ごく稀に上部消化管の病気が原因の場合もあります。

以上から、血便には様々な種類があり、原因として考えられる病気も多岐に渡るため、自己判断で原因を特定することは困難です。したがって、気になる便が出た場合には便の状況を注意深く観察し、医療機関を受診して適切な検査や治療を受けることが大切です。当院でも随時診察や治療を行なっておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

血便の原因として考えられる病気

大腸ポリープ

肛門に近い大腸でポリープができた場合には、便がポリープに擦れることで出血を起こし、血便を伴うことがあります。しかし、大腸ポリープが原因の場合は目では確認できないほど少量の出血であるため、気づくことなく見逃されてしまうことも多いです。したがって、定期的に便潜血検査を受診し、大腸ポリープを早期発見することが大切になります。

日帰り大腸ポリープ切除

大腸がん

初期の大腸がんには自覚症状に乏しいため、気づかないうちに進行していることがあります。逆に言うと、症状が現れた頃にはがんがかなり進行している可能性が高く、注意が必要です。

結腸の区分ごとの症状の現れ方

  • 盲腸
  • 上行結腸
  • 横行結腸のがん

これらのがんは肛門から距離も遠いため、自覚症状に乏しい傾向があります。多くの場合は、腹部から慢性的な出血やしこりなどによって生じる貧血から診断・発見されます。

  • 下行結腸
  • S状結腸
  • 直腸S状部
  • 直腸のがん

これらのがんは肛門から距離も近いため、症状としては鮮血便が見られる傾向があります。ただし、これらのがんは初期の段階では自覚症状に乏しいため気づかないうちに進行し、症状が現れた際にはがんがかなり進行している可能性が高く、注意が必要です。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎の主な症状は、下痢や血液が混入した血便、粘液の血便などになります。
主に重症化すると血便が出る傾向があります。

潰瘍性大腸炎

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎とは、何らかの原因によって大腸の動脈に血流障害が起き、大腸粘膜が炎症を起こす病気です。便秘を起こしやすい高齢の女性に多く見られますが、近年は若年層でも増加傾向にあります。便秘の排便時にいきむことも、血流を阻害して虚血性大腸炎を引き起こす原因となります。

病状が進行すると、下痢症状を引き起こしたり便器が真っ赤に染まるほどの大量の出血を起こすようになります。

出血性大腸炎

出血性大腸炎は、病原性大腸菌の感染や抗菌薬による副作用などにより、大腸の粘膜が炎症を起こす病気です。発症すると大腸粘膜が出血を起こし、血便が出ることがあります。初期の段階ではほとんど自覚症状はありませんが、進行すると突然水分を多く含んだ下痢とともに激しい腹部痙攣が生じ、その後血便を伴った下痢を引き起こします。

痔(痔核・裂肛)

痔核とは一般的にいぼ痔と呼ばれる病気です。主な症状は炎症部の痛みや痒み、出血、粘液漏れなどで、また痔が大きくなると肛門外へ脱出することもあります。排便時に痔が便と擦れて出血を起こすと鮮血便となることもありますが、出血量は少量の場合もあれば、したたるほど多量な場合もあります。

一方、裂肛とは一般的に切れ痔と呼ばれる病気で、主な症状は排便時の痛みや少量の出血などになります。

出血量が少ない場合も注意が必要

血便の原因となる病気には様々な種類がありますが、多量の出血が見られた場合には貧血になったりショック状態に陥ることもあるため、注意が必要です。また、出血量が少量であっても、大腸がんなど命の危険を伴う重篤な病気の場合はあまり出血が見られない場合もあります。実際の医療現場でも、少量の血便が見られた際に痔や裂肛だと自己判断して放置してしまい、気づいた時には大腸がんがかなり進行していたというケースもあります。大腸がんは早期発見、治療を行えば完治できる病気のため、少量の出血であっても安心せずに医療機関を受診し、適切な診断や胃カメラ検査、大腸カメラ検査を受けるようにしましょう。

当院では、経験豊富な消化器内視鏡学会の専門医が胃カメラ検査大腸カメラ検査を実施しています。気になる症状が現れた場合には、お気軽にご相談ください。

年1回は便検査を実施しましょう

上記の通り、血便の原因となる病気は多岐に渡り、痔などの比較的軽度なものから、大腸がんのような重篤な病気もあります。
大腸がんは、現在では早期発見、治療を行えば根治が期待できる病気です。肛門からの出血は目では確認できないほど微量な場合もあるため、年一回は定期的に便潜血検査を行うようにしましょう。

40歳以上の方は、職場や自治体が実施する大腸がん検診で年1回便潜血検査を受けることができます。便潜血検査で陽性判定が出た場合は、大腸カメラ検査を受けて原因を特定しましょう。

大腸カメラ検査