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肝臓内科

肝臓内科とは

肝臓内科

肝臓内科とは、胃や小腸、大腸、肝臓、膵臓、胆嚢などの臓器を扱う消化器内科の一部です。以前は珍しい診療科ですが、近年では消化器内科と肝臓内科に分割する医療機関も増えてきています。

当院では、消化器内科と肝臓内科を兼任する専門医が、長年の豊富な経験を活かして診療を行っています。肝臓の病気は自覚症状が出にくいために放置されがちですが、中には重篤な病気が隠れている恐れもあるため、当院ではできるだけ早期に適切な治療が行えるよう、心がけています。

そもそも「肝臓」はどんなはたらきをしているのでしょうか?

肝臓は、我々が思っている以上に多くのはたらきを担っている臓器です。肝臓は右上腹部にあり、重量も約1.5kgと人体の中で最も大きい臓器です。肝臓では約1000種類の酵素によって500以上もの化学反応を起こし、アルコールや薬を分解したり、摂取した栄養素の変換、エネルギー貯蔵、免疫の調整、胆汁の分泌など、我々の生命活動に欠かせない多くのはたらきを担っています。1人の肝臓を人工的に作るとしたら、東京23区と同等の規模になると言われるほど、優れた化学工場になります。

物質の代謝

肝臓では、摂取した栄養素を分解・再合成し、必要に応じて血液中に放出したり余剰分を肝臓に蓄えるなどの代謝をつかさどるはたらきがあります。我々の血糖値が正常な範囲内に保たれるのも、肝臓が摂取した糖分をグリコーゲンとして蓄え、体内の血糖値が低下するとグルコースに変換して血液中に放出するはたらきを担っているためです。また、体内のコレステロールの約7割も肝臓で生成されています。その他にも、アルブミンの生成や出血を起こした際に血液を凝固する物質も肝臓で生成されています。
したがって、糖尿病脂質異常症、高コレステロール血症といった代謝の異常による病気を治療する上では、このような肝臓のはたらきを把握しておくことが大切になります。

解毒

肝臓は、体内の有害な物質を解毒する役割を担っています。例えば、アルコールや薬などの有害な物質を毒性の低い物質に変換して尿や胆汁に放出したり、タンパク質やアミノ酸を分解する際に生まれる有害物質のアンモニアを、尿素に変換されて尿中に放出するなどのはたらきがあります。

胆汁の生成

肝臓には、脂肪を分解するはたらきもあります。肝臓で生成される胆汁は、胆管に分泌されて胆嚢で濃縮され、十二指腸で膵液とともに脂肪の消化・吸収を助けています。

肝臓内科でよくある病気

肝臓は一般的に沈黙の臓器と言われるように障害が起きても自覚症状に乏しく、気づかないうちに病状が進行していることがあります。急性肝炎のように突然発症する肝障害の場合では、目や皮膚が黄色く変色する黄疸や食欲不振、吐き気、全身の倦怠感、尿の色が濃くなるなどの症状が現れることが多いですが、少しずつ進行する慢性肝炎の場合では、初期には自覚症状が現れないことが多く、急性肝炎のような症状が現れた時にはすでに肝硬変など重篤な病気に進展していることが多いため、注意が必要です。
また、肝臓は大部分が失われても1年程で元の大きさに戻るほどの優れた再生能力も持っています。この再生能力の高さが、自覚症状が現れにくい理由とされています。肝臓の病気が発覚する患者様は、自覚症状がないまま検診等の血液検査で偶然異常が見つかるケースがほとんどです。
以下は、代表的な肝臓病になります。ぜひ各病気の特性を理解し、早期発見に繋げましょう。

急性肝炎

肝炎には、急性肝炎と慢性肝炎の2つのタイプがあります。急性肝炎は、何らかの原因により肝細胞が急速に破壊され、肝機能に障害をもたらす疾患です。ほとんどの場合、ウイルスが原因です。肝炎ウイルスにはA型、B型、C型、D型、E型の5種類があり、そのうちA型とE型は急性肝炎の原因となります。B型とC型は急性と慢性の両方を引き起こすことがあります。D型はB型に感染している場合に起こる疾患であり、同時感染することもあります。

また、薬物性肝障害や自己免疫性の肝炎も急性肝炎に含まれます。薬物性肝障害は、薬や健康補助食品などが原因で肝臓が炎症を起こす病気です。

急性肝炎は通常、自然治癒する可能性が高いですが、まれに重症化し、劇症肝炎や急性肝不全などの重篤な状態に進行することがあります。

ウイルス性肝炎

脂肪肝、NAFLD/NASH

脂肪肝とは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態の病気です。この脂肪は、肝細胞一つ一つの中に蓄積されていきます。原因は様々ですが、最も代表的なものは過剰な飲酒です。しかし、近年では飲酒習慣がないにもかかわらず脂肪肝になる、「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)」の患者様も増加傾向にあります。日本では男性で40%、女性で20%が非アルコール性脂肪性肝疾患であるという報告もあります。
以前は、脂肪肝はそれほど危険視されてはいませんでしたが、近年では非アルコール性脂肪性肝疾患の患者様の10~20%は、その後肝硬変や肝がんなど命の危険を伴う重篤な病気を発症していることがわかってきています。
脂肪肝の診断は、腹部超音波検査などで比較的簡単に行うことができます。しかし、現時点では非アルコール性脂肪性肝疾患に有効な薬剤はあまりないため、主な治療は生活習慣の改善などの対処療法が中心となります。当院でも、非アルコール性脂肪性肝疾患の患者様に対して生活習慣指導を行い、自力で症状を改善できるようサポートしております。具体的には、定期的な食事習慣の見直しや運動療法によって少しずつ症状の改善を図ります。気になる症状がある場合は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談ください。

脂肪肝

アルコール性肝疾患

アルコール性肝疾患とは、長期間過剰な飲酒習慣を継続することで発症する病気です。過剰な飲酒の基準は、飲酒に含まれるアルコールを純エタノールに換算して1日60g以上とされます。なお、適度な飲酒量は1日平均20gです。

種類 アルコール度数 アルコール換算量
ビール(中瓶1本) 500ml 5% 20g
日本酒 1合 180ml 15% 22g
焼酎 1合 180ml 35% 50g
ワイン(1杯) 120ml 12% 12g
ウイスキー ダブル 60ml 43% 20g
ブランデー ダブル 60ml 43% 20g
アルコール性肝疾患

過度な飲酒習慣があると、肝臓に脂肪が蓄積されて脂肪肝を発症する可能性が高まります。実際に、日常的に飲酒習慣のある人の90%が脂肪肝であるという報告もあります。また、そのうち10~20%は、その後アルコール性肝炎へ進展しています。
アルコール性肝炎は重篤化すると、その後禁酒しても死に至ることのある危険な病気です。したがって、気になる症状がある方は、軽症なうちに当院までご相談ください。

アルコール性肝炎

原発性胆汁性胆管炎

原発性胆汁性胆管炎とは、胆汁の通り道である小葉間胆管から隔壁胆管が、自己免疫機能の異常によって損傷を起こし、胆汁がうっ滞する病気です。
胆汁は肝臓の肝細胞で生成され、毛細胆管を通って細胆管、小葉間胆管へと流れます。小葉間胆管は集合して隔壁胆管となって肝管へと接続され、左右の肝管が合流して総肝管となります。以前は原発性胆汁性肝硬変という病名でしたが、現在では原発性胆汁性胆管炎と呼ばれます。原因はまだはっきりとは解明されておらず。国から難病指定されています。
中年以降の高齢の女性に多く見られる傾向があり、症状に応じた治療を行うことが大切です。

膵炎

急性膵炎

急性膵炎とは、膵臓の膵液が過剰に分泌されることで、膵液の消化酵素が膵臓自体に炎症を起こす病気です。主な原因は、過度な飲酒や油分の高い食事の過剰摂取、高中性脂肪血症、また、胆管から落ちてきた胆石によって膵臓の出口が閉塞を起こすことなどが挙げられます。男性の場合はアルコールが原因であるケースが最も多く、女性の場合は胆石が原因のケースが多くなりますが、中には原因不明なケースもあります。
中高年の男性に多く見られる傾向があり、発症すると激しいみぞおちの痛みや背部痛、発熱、吐き気などの症状が現れます。また、重篤化すると10%が死に至るという危険な病気です。
治療には長期間の入院が必要となり、絶飲食をした上で、膵液の消化酵素のはたらきを抑制する薬の点滴などを行います。胆石が原因の場合は胆石の摘出手術を行います。
急性膵炎は生活習慣の乱れが原因であることが最も多いため、日々の生活習慣を見直すことが予防の基本となります。

慢性膵炎

慢性膵炎とは、膵臓が繰り返し炎症を起こすことで膵臓の細胞が死滅していき、膵臓のはたらきが低下していく病気です。主な原因は、急性膵炎と同様ほとんどが過度な飲酒や胆石、中には原因不明のケースもあります。
主な症状は、上腹部・背中の痛みや食欲不振、腹部膨満感などになります。また、症状が進行すると膵臓の消化吸収のはたらきが低下することで下痢や体重減少を起こすようになります。さらに進行すると、膵臓からインスリン分泌量が低下し、糖尿病を合併することもあります。
治療では、禁酒や食事習慣の見直しなど、生活習慣の改善が中心となります。また、膵臓のはたらきを改善するために、インスリン注射や消化酵素薬の投与を行うことがあります。腹痛を繰り返す膵石を認めれば、体外衝撃波で膵石を粉砕したり内視鏡で除去する手術も検討されます。