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過敏性腸症候群

以下の症状に該当する場合は、過敏性腸症候群(IBS)の可能性があるため注意が必要です。

  • 通勤・通学中に腹痛をもよおす
  • 緊張するシーンに腹痛が起こる
  • 緊張するシーンでおならが出る
  • 旅行中に激しい腹痛が生じる
  • 寝ている最中は症状が治まる
  • 排便後に残便感がある
  • 腹痛とともに吐き気・嘔吐を伴う
  • 下痢・便秘が続く、または交互に繰り返す
  • ストレスを感じるシーンで激しい腹痛をもよおす
  • 腹痛が1ヶ月以上継続している
  • 平日と休日でお腹の症状に差がある
  • 腹痛が起きてもすぐに排便できない
  • コロコロと硬い便が出る

過敏性腸症候群は命の危険を伴うほどの重篤な病気ではありませんが、治療しないと生活の質を低下させます。気になる症状が現れた際には、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは、激しい腹痛や便秘、下痢などの症状が現れているにもかかわらず、検査をしてもはっきりとした原因が分からない病気です。過敏性腸症候群は症状に応じて便秘型、下痢型、混合型などに分類されます。現在国内で10〜15%に発症しているという報告があり、特に若い世代に多く見られる傾向があります。早急に治療の必要があるほどの重篤な病気ではありませんが、症状を改善しないと仕事や学業など生活の質を低下させる恐れがあるため注意が必要です。
また、過敏性腸症候群は腹痛以外にも食欲不振胃痛、頭痛、喉が詰まった感じ、めまい、肩こり、抑うつ、慢性的な不安感などの症状を併発することもあります。

過敏性腸症候群の治療には、症状に対する専門知識だけでなく、患者様との密なコミュニケーションを行うことも大切です。当院では、過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなど原因不明の難病に対して、経験豊富な専門医が漢方薬なども使用しながら適切な治療を行なっております。気になる症状がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、過度なストレスの蓄積や不安感、恐怖感、抑うつ症状などの心理的要因や、食事習慣の乱れ、薬の副作用、ホルモンバランスの乱れなど様々な要因が複合的に関連して発症すると考えられています。
また、過敏性腸症候群は感染性腸炎の後に発症する傾向もあることから、腸の免疫機能の異常との関連性も指摘されています。

食事習慣との関連性については、脂肪分・カロリーの高いものや、乳製品、小麦、豆類、チョコレート、お茶、コーヒー、一部の人工甘味料、ブロッコリー・アスパラガスなど一部の野菜が症状の原因になったり悪化させる恐れがあります。理由としては、これら食品に含まれる炭水化物を消化・吸収することが困難な人がいることや、炭水化物が腸内細菌によって発酵される際に生じるガスが腹部膨満感や痙攣痛を引き起こすことなどが考えられています。ただし、これら食品を構成する成分は炭水化物だけではないため、炭水化物が明確な原因とは断定できません。その他では、過食や早食い、または長時間絶食した後の食事をしても症状を引き起こすこともあります。

食事以外の関連性については、過度なストレスの蓄積や睡眠不足などによって心理的負荷が生じると、自律神経が乱れて症状を引き起こすとも考えられています。また、大腸だけでなく小腸に障害が起きていることや、セロトニンなどの神経伝達物質との関与も指摘されています。

過敏性腸症候群の診断

過敏性腸症候群の症状は他の病気とも共通していることが多いため、まずは大腸カメラ検査腹部超音波検査、血液検査などの検査を行なって、現れている症状の原因を特定します。長引く下痢や便秘の場合は大腸カメラ検査を、膵臓や甲状腺の病気と類似する症状が見られる場合は腹部超音波検査や血液検査を行い、原因が他の病気でないことが確認できたら、過敏性腸症候群と診断されます。

過敏性腸症候群の診断基準

過敏性腸症候群の診断は、Rome基準という国際基準に照らし合わせて行います。Rome基準にはいくつか種類がありますが、中でもRomeⅢが一般的に採用されています。2016年にRomeⅣという最新の基準が制定されましたが、RomeⅣは主に腹痛のみに注目した基準となっており、実際には他の腹部違和感などの症状も多く見られることから、現在でもRomeⅢが最も広く採用されています。

RomaⅢ基準

  • 排便すると腹痛などの症状は軽減される
  • 症状の有無と排便頻度に関係性がある。
  • 症状の有無と便の状態に関係性がある。

※症状が6ヶ月以上続き、直近3ヶ月以内の1ヶ月において最低3日以上腹部不快感や腹痛が起こっており、①〜③のうち2つ以上に該当する。

RomeⅣ基準

  • 排便すると症状が良くなる。
  • 排便頻度の変化を伴う(「発症時から」に限らず)。
  • 便の形状の変化を伴う(「発症時から」に限らず)。

※症状が6ヶ月以上続き、直近3ヶ月以内の1週間において最低1日以上腹痛が起こっており、①〜③のうち2つ以上に該当する。

過敏性腸症候群の分類

過敏性腸症候群は、便の状態をブリストル便性状スケールという尺度に照らし合わせて、以下のように分類されます。

  • 便秘型IBS(IBS-C):硬い便やコロコロ便が多い、あるいは柔らかい便や泥状の便、水っぽい便が少ない
  • 下痢型IBS(IBS-D):硬い便やコロコロ便が少ない、あるいは柔らかい便や泥状の便、水っぽい便が多い
  • 混合型IBS(IBS-M):硬い便・コロコロ便と、柔らかい便・泥状の便、水っぽい便がともに現れる
  • 分類不能型IBS:上記1〜3のどれにも当てはまらない

過敏性腸症候群の治療

薬物療法

薬物療法

過敏性腸症候群の治療には、症状に合わせて様々な薬物療法が適用されています。下痢型の場合は下痢止め、便秘型の場合は下剤などが主に使用されますが、当院ではこれら西洋医学に加えて、漢方を用いた東洋医学による治療も採用しています。

食事療法

食事習慣を改善することも、過敏性腸症候群の治療には重要です。具体的には、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取すると良いでしょう。一方、乳酸菌も摂取した方が良いという意見もありますが、患者様によってはかえって症状が悪化する場合もあるため、注意が必要です。
乳酸菌といった腸内活動を活性化するものを摂取しているにもかかわらず、下痢や便秘などの症状が改善されない場合は過敏性腸症候群の可能性がありますので、その際には一度当院までご相談ください。

運動療法

便秘型の過敏性腸症候群の改善には、運動習慣を取り入れることが有効です。運動は、一気に激しいものを取り入れるのではなく、軽いウォーキングやランニング、水泳などの有酸素運動を長期間継続することが大切です。

心理療法

上記のような治療を行なっても症状が改善されない場合は心理的要因が関与している可能性がありますので、心理療法を取り入れることもあります。

受験ストレスによる過敏性腸症候群

過敏性腸症候群の原因には、心理的ストレスが関与している場合があります。特に近年では、受験シーズンに胃炎や下痢、便秘などの症状を訴える高校生の患者様が増加傾向にあります。受験勉強のストレスによって自律神経が乱れて胃腸のはたらきが低下すると、腸内にガスが溜まって様々な症状を引き起こします。このような状態は過敏性腸症候群が原因の可能性がありますので、注意が必要です。

「受験上の配慮」の利用

過敏性腸症候群を発症している受験生は、「受験上の配慮」を利用することを推奨しています。「受験上の配慮」とは、病気やけがなど身体的な事由により通常の受験が困難な受験生に対して設けられた受験方法です。具体的には、別室で受験する、受験中もトイレに行きやすい出入り口付近の座席に変更してもらうなどの制度で、現在多くの大学で採用されています。
「受験上の配慮」を利用するには、事前に志望大学に申請書を提出し、認可を受ける必要があります。申請には医師による診断書が必須の場合が多いため、志望大学の願書やホームページなどを確認しておきましょう。当院でも診断や申請書の作成は行なっておりますので、ぜひご利用ください。

過敏性腸症候群にお悩みの際には当院までご相談ください

過敏性腸症候群は命の危険を伴うような重篤な病気ではないため、自己判断で我慢してしまい適切な治療を行わないケースが多く見られます。しかし、過敏性腸症候群を発症すると生活の質を著しく低下させるため、なるべく早い段階で医療機関を受診し、適切な治療を行うことが重要です。

当院では、経験豊富な消化器内科専門医が過敏性腸症候群の治療を担当しています。気になる症状が現れた際には、ぜひお気軽に当院までご相談ください。