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ウィルス性肝炎

ウイルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎)

ウイルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎)

ウイルス性肝炎とは、肝臓に肝炎ウイルスが感染することで肝臓が炎症を起こし、肝機能障害を引き起こす病気です。肝炎ウイルスはA型~E型に分類されますが、日本人は特にB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの感染が多いとされます。ウイルス性肝炎は治療せずに感染状態が長期間継続すると慢性肝炎に進展する恐れがあるため、注意が必要です。
慢性肝炎の場合はしばらく症状が現れず、感染から数十年の潜伏期間を経て徐々に肝機能が低下していきます。初期では自覚症状に乏しいために本人も気づかずに放置してしまい、症状が現れた時には肝硬変や肝臓がんなど重篤な病気へと進展しているケースが多く見られます。したがって、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染した際には、できるだけ早期に適切な治療を開始し、根治することが重要です。
当院では、B型肝炎・C型肝炎の検査や治療に対応しております。肝炎ウイルス検査で陽性判定が出た場合はもとより、定期検診や人間ドックで肝臓の異常を指摘された方、40歳以上で今まで肝炎ウイルス検査をしたことのない方、過去に輸血や手術の経験がある方は、肝炎を発症する可能性があるため、ぜひ一度当院までお気軽にご相談ください。

B型・C型以外のウイルス性肝炎

A型肝炎ウイルス

A型肝炎ウイルスは、不衛生な環境下で比較的多く見られるウイルスです。日本は上下水道が完備しているなど衛生環境が良い上、ワクチンも普及しているために感染の恐れはほとんどありませんが、中国や東南アジア・インドなどの渡航先で感染してしまうケースは見られます。
感染ルートの多くは、便に含まれたウイルスが人の手などを介して食べ物や水に移り、それらを摂取することで感染に至ります。ただし、ウイルスに感性してもほとんどは自然治癒するため、慢性化する可能性はあまりありません。

D型肝炎ウイルス

D型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスと共存しないと存在できないため、感染する可能性はほとんどありません。そのため、D型に感染した場合には必ずB型急性肝炎にも同時感染します。また、B型慢性肝炎との重複感染になる場合もあります。

E型肝炎ウイルス

E型肝炎ウイルスは、ブタやイノシシ、シカなどの動物性のウイルスです。日本ではこれらの動物のレバ刺しや生肉などを食べる文化があるため、年間で数十件ほどの感染例が報告されています。なお、E型肝炎は一過性のため、多くの場合慢性化せずに自然治癒します。

B型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで発症します。主な感染ルートは血液や体液が媒介になることが多いとされます。
B型肝炎ウイルスは、ウイルスの種類(ジェノタイプ)や感染者の健康状態、感染のタイミングなどによって、一過性の感染になることもあれば長期間慢性化した感染になることもあります。ウイルスの種類がジェノタイプAの場合や3歳未満の子どもが感染した場合、出産時に母から子に感染した場合は、慢性化する可能性が高いと言われています。

主な感染ルート

垂直感染

  • 妊娠中や出産時に母から子に移る感染

水平感染

  • 性行為などに体液を媒介にした感染
  • ピアスを開けたりタトゥーを入れる際の手術器具を媒介にした感染
  • 手術の際に不衛生な器具を使用したことによる感染
  • 民間療法などで不適切な器具を使用した際の出血が原因で移る感染
  • 覚醒剤の注射器を不適切に乱用することで移る感染

B型肝炎の症状

B型急性肝炎

一過性のB型急性肝炎の場合は、感染後1〜6ヶ月間の潜伏期間を経て、嘔吐や食欲不振、全身倦怠感、悪心、黄疸、褐色尿などの症状を引き起こします。
多くの場合は数週間で完治しますが、中には重篤化して肝機能不全に陥ることもあります。

B型慢性肝炎

出産時に母から子へ感染すると、無症状のままウイルスが子の体内に潜伏する無症候性キャリアという状態になります。そのまま10数年潜伏を続け、思春期に体内の免疫機能が強化されると、感染者の約2割が肝炎を発症してB型慢性肝炎となります。
B型慢性肝炎自体は無症状の場合が多いですが、長期間放置するとその後肝硬変や肝臓がんへと進展する恐れもありますので、できるだけ早めに受診して治療を行うことが大切です。

検査

当院では、腹部超音波検査を行っております。
その他、肝炎の検査は、血液検査や腹部超音波検査、フィブロスキャン検査、肝生検などがあります。
血液検査では抗原や抗体を確認することで、B型肝炎ウイルス感染の有無を診断します。

肝機能検査

血液検査にてγGTPやALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビンなどの値を測定することで、肝機能の異常の有無を確認することができます。また、肝炎は進行すると肝臓が硬化していく特徴があるため、4型コラーゲンやヒアルロン酸、M2BPGiなどで肝臓の状態を確認することもあります。その他では、AFP、PIVKAⅡの腫瘍マーカーを確認することもあります。
このように、検査では様々な観点から肝臓の状態を確認し、総合的に診断を行います。

抗原・抗体検査

抗原・抗体検査によって、B型肝炎ウイルス感染の有無を判定することができます。陽性判定となった場合には、B型肝炎ウイルスの感染が確認できます。

HBe抗原 B型肝炎ウイルスが肝臓で増殖していると、多く確認されます。
HBs抗体 過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがある場合や、B型肝炎ワクチンを摂取した場合に陽性判定が出ます。また、B型肝炎ウイルスに感染し、その後ウイルスが排除された場合にも陽性判定が出ます。
HBc抗体 急性肝炎やキャリアの判断などを行う際に測定します。
HBe抗体 B型肝炎ウイルスの感染力の強さを測定します。HBe抗体が陰性と判定された場合には、感染力が弱いと判断できます。
HBV-DNA測定 B型肝炎ウイルスのDNAを測定します。感染している場合には陽性判定が出ます。

画像検査

腹部超音波検査によって肝臓の状態を確認します。急性肝炎や慢性肝炎の状態の把握に効果的であるため、診断時や経過観察の際に行うこともあります。

肝生検

肝生検とは、腹部超音波検査の際に肝臓の組織を採取して詳しく分析する検査です。慢性肝炎や肝硬変の有無を確認する際に行われます。ただし、検査の際には入院が必要なため、患者様への負担が大きい検査となります。また、重症化している場合には検査が行えないこともあります。

フィブロスキャン検査

フィブロスキャン検査は、近年肝臓の検査の際に新たに導入が進んでいる検査法で、肝臓の状態を比較的簡単に確認できます。腹部超音波検査のように入院の必要がなく、ベッドに横たわった状態で1~2分程度で検査を終えられるため、患者様の負担はほとんどありません。精度は肝生検の方が高いですが、患者様の負担を限りなく軽減した検査であることから、近年導入が進んでいる検査法となります。血液検査などと併用することで精度を向上させられないか、研究が進められています。

治療

B型急性肝炎

B型急性肝炎の治療は、A型肝炎と同様に経過観察を行いながら対症療法を行います。ただし、感染の重症度によっては命の危険を伴う恐れもありますので、状況に応じて抗ウイルス療法や血漿交換などの治療が適用されることもあります。また、一刻を争うような状況の場合は、肝移植手術を検討することもあります。

B型慢性肝炎

B型慢性肝炎の治療では、症状がこれ以上進行しないようにウイルスの鎮静化などの処置を行なっていきます。B型肝炎ウイルスは、治療によってウイルスを除去・排出することが難しいため、核酸アナログ製剤やインターフェロンによってウイルスの進行を抑制する治療が検討されます。一般的には核酸アナログ製剤による治療が広く行われています。

核酸アナログ製剤

メリット

  • 副作用の恐れが少ない
  • 経口薬による治療が行える

デメリット

  • 一度治療を開始すると中止が困難
  • 今後妊娠を希望している場合は使用できない
  • 治療によって耐性ウイルスに変異する可能性あり
インターフェロン

メリット

  • 治療を中断することができる
  • 免疫機能を活性化させることが可能
  • 耐性ウイルスに変異する可能性がない

デメリット

  • 副作用を伴うことがある
  • 注射による痛みを伴う
  • ジェノタイプごとで効果にばらつきがある

治療にかかる費用は、核酸アナログ製剤治療・インターフェロン療法ともに高額となりますが、これら治療は医療費助成制度によって自己負担を抑えることが可能です。
当院の院長は肝臓の専門医であることから、上記のような様々な治療や経過観察を行うことが可能です。
何かご不明な点がございましたらお気軽に当院までご相談ください。

予防方法

予防方法

B型肝炎の予防には、ワクチンの接種が効果的です。B型肝炎ワクチンを事前に摂取しておくことで、ウイルスに対するHBs抗体が生成されます。乳幼児期にワクチン摂取を3回実施しておくと、生成されたHBs抗体は約15年間有効となります。ただし、20歳までにワクチン接種を実施しておけば免疫効果は期待できますが、それ以降は加齢とともに効果は低下していきます。40歳以降にワクチンを接種した場合では、免疫機能を獲得する確率は約8割という報告もありますので、できるだけ早い段階でワクチン接種を行なっておくことを推奨しております。

B型肝炎に関しての注意

  • 現在B型肝炎を発症していない場合も、肝炎の再発や今後の肝臓がんの発症リスクを軽減させるために、定期的に経過観察を行うことを推奨しています。具体的には、3ヶ月に一度の頻度で血液検査、半年に一度の頻度で腹部超音波検査、また、状況によってはフィブロスキャン検査を定期的に実施しておくと安心です。
  • B型肝炎ウイルスに感染しても妊娠・出産を行うことは可能ですが、その際にはリスクを抑止するための事前準備が不可欠となります。
    詳しくは当院までご相談ください。
  • B型肝炎と診断された場合は、ご家族など周囲の方に感染が拡大する恐れがありますので、ご注意ください。念のため、ご家族やパートナーの方にも受診していただき、感染の有無を確認した方が良いとされます。

C型肝炎

C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することで発症します。C型肝炎ウイルス(HCV)は、感染しても約7割は無症状であるため気付かないことが多いですが、その後慢性肝炎や肝硬変、肝臓がんへと進展する恐れもあるため注意が必要です。慢性肝炎に進展すると、その後約4割が20年以上の潜伏期間を経て肝硬変を発症するという報告もあります。
また、肝硬変になると、年間7%がその後肝臓がんを発症しています。肝硬変は、初期の段階では肝機能に支障もなく合併症も現れない代償性肝硬変という状態が続きますが、症状が進行するにつれて徐々に肝機能が低下していき、様々な合併症を伴う非代償性肝硬変になります。このように、C型肝炎は自覚症状に乏しいために早期発見が難しく、気づかないうちに進行して非代償性肝硬変に変化した段階で発覚するケースが多く見られます。現在では、C型肝炎は慢性肝炎や肝硬変、肝臓がんの発症原因第1位とされています。
感染ルートのほとんどは血液感染によるため、一般的な日常生活の中で感染する可能性は低い感染症です。以下は、主なC型肝炎ウイルスの感染ケースとなります。

  • 感染者との性交渉
  • ピアスの穴を開けたりタトゥーを入れる際の不衛生な器具の使用
  • 母子感染

現在日本では、医療機関による衛生管理が厳格化されているため輸血などの際に感染する可能性は低いですが、1988年より以前の血液凝固因子製剤に使用や1992年より以前の輸血、1994年より以前のフィブリノゲン製剤の使用においては、現在ほど衛生管理が厳格に行われていなかったことによりC型肝炎に感染している可能性も考えられます。なお、これらの治療から1年以上経過した状態でC型肝炎ウイルス検査を行い陰性判定が出た場合は、感染の可能性はほぼありません。

C型肝炎の症状

C型肝炎はB型肝炎のような急性肝炎ではなく慢性肝炎のため、感染しても初期段階では自覚症状に乏しく、気づかないうちに進行しているケースが多く見られます。ただし、中には疲労感や食欲不振、倦怠感などの症状が現れることもあります。その後症状が進行して肝硬変や肝臓がんを発症すると、体重減少や腹水、黄疸、肝性脳症といった症状が現れるようになります。ただし、中にはこれらの症状が現れないこともあり、健診などで偶然肝硬変や肝臓がんが発見されることもあります。

検査

血液検査

C型肝炎の検査で最も一般的なものは、血液検査でC型肝炎ウイルスの抗体(HCV抗体)の有無を確認する方法です。これは健診項目に組み込まれていることもありますので、過去にC型肝炎ウイルスの抗体検査の経験がない場合は、一度確認してみることを推奨しています。
C型肝炎ウイルス抗体検査の陽性判定が出た場合は、HCV核酸増幅検査(HCV-RNA定量検査)によってC型肝炎ウイルスの感染が現在も持続しているかどうかを確認します。C型肝炎ウイルス抗体検査では、過去にウイルスに感染して現在では自然治癒している場合にも陽性判定が出ることがあります。実際に感染者の約10%は自然治癒しているという報告もあります。
C型肝炎ウイルスの持続感染が確認された場合には、C型肝炎のセログループやジェノタイプを確認し、タイプに対応した治療方法を検討していきます。
その他では、B型肝炎と同様に肝臓の炎症度合いを確認するため、γGTPやALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビンを確認します。また、肝臓の繊維化の進行度合いを確認するため、ヒアルロン酸、4型コラーゲン、M2BPGiなどを確認します。肝臓がんの有無を確認するためにAFP・PIVKAⅡなどの腫瘍マーカーによる検査を行うこともあります。このように、様々な検査を行うことで、総合的に肝機能の状態を診断していきます。

画像検査

腹部超音波検査やMRI検査、CT検査を行なって肝臓の状態を確認します。腹部超音波検査は慢性肝炎や肝硬変、肝臓がんの発見に効果的な検査で、初期診断時や経過観察の際に広く実施されています。また、入院の必要がなく患者様への負担が少ない検査であることから、C型肝炎だけでなく様々な肝臓の病気に対しても適用されます。

フィブロスキャン検査

フィブロスキャン検査とは、肝臓の繊維化の状態を簡単に確認することができる新しい検査方法です。検査方法は、腹部超音波検査と同様にベッドで横たわって1~2分程度で終了し、入院もないため患者様の負担を限りなく軽減することができます。ただし、肝生検と比較すると検査の精度が劣るため、血液検査などと組み合わせて効果を向上させられないか、研究が進められています。

治療

C型肝炎はB型肝炎とは異なり、治療によって改善することが可能です。具体的には、インターフェロン療法やインターフェロンフリー療法によって、ウイルスの除去や肝機能の低下を抑制する治療を行います。

インターフェロン療法

インターフェロン療法は、古くからC型肝炎の治療の際に行われてきた治療法です。インターフェロンには様々なタイプがあるため、他の薬と併用する方法も検討されます。ただし、この治療には副作用のリスクが大きいというデメリットがあるため、現在ではインターフェロンフリー療法の採用も普及しております。

インターフェロンフリー療法

インターフェロンフリー療法は、2014年から採用された新しいC型肝炎の治療法です。具体的にはDAA(直接作用型抗ウイルス剤)という薬を服用して治療を行います。この新しい治療法の確立によって、以前は難しいとされたC型肝炎の根治が比較的容易となり、初めてC型肝炎の治療をした患者様の95%以上が、C型肝炎ウイルスの除去に成功しているという報告もあります。また、入院の必要もなく、内服薬のみで治療が行えることも、患者様の負担を軽減する意味でも大きなメリットと言えます。
現在普及しているDAA(直接作用型抗ウィルス剤)は、以下のような様々な種類があります。治療では、過去の治療経験や肝炎の状態、ウイルスのセログループ、ジェノタイプなどを総合的に鑑み、最適なものを選択します。
当院でもインターフェロンフリー療法に対応しておりますので、ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。
(主なDAA(直接作用型抗ウイルス剤))
ソホスブビル、ソホスブビル・ベルパタスビル配合錠、ソホスブビル・レジパスビル配合錠、グレカプレビル・ピブレンタスビル配合錠、リトナビル・バリタプレビル・オムビタスビル配合錠、アスナプレビル・ダグラタスビル・ベクラブビル配合錠、エルバスビル・グラゾプレビル併用療法

肝庇護療法

肝庇護療法とは、C型肝炎ウイルスを排除するのではなく肝機能を正常な状態に維持することを目的とした治療法です。C型肝炎ウイルスの除去が難しいと判断された際に適用される治療法ですが、近年ではインターフェロンフリー治療が一般化されてきたため、現在ではあまり行われることはありません。具体的には、ウルソデオキシコール酸の薬を内服したり、グリチルリチン配合剤の注射などを行なって肝機能の維持を図りますが、根本的な治療ではないため、生涯継続する必要があります。

C型肝炎の注意点

C型肝炎の治療において最も留意すべき点は、DAA(直接作用型抗ウイルス剤)による治療などでウイルスを排除できたとしても、その後も治療を継続することです。ウイルスが除去されても、慢性肝炎や肝硬変によって生じた傷から肝臓がんを発症する可能性があります。実際に、ウイルスを除去した後に自己判断で治療を中断してしまい、その後肝臓がんを発症しているケースは多く見られます。
したがって、一度C型肝炎と診断された場合は、ウイルスを除去した後も定期的に肝臓がんの検査を受けるようにしましょう。